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執筆者の写真HIKO HYAKUSOKU

外傷性皮膚疾患 

熱傷もまた外傷であり、項目を分けるのは分類上適当ではないのですが、説明の便宜上分類を致します。

 

外傷性皮膚疾患 


1.「きず」の種類

「きず」の種類は、いろいろな分類方法がありますが、分かりやすく1つずつ解説していきます。


a) 時間経過による「きず」の分類

「きず」には急性創(新鮮創)と慢性創の2つがあります。急性創がなかなか治らず慢性創に移行すると、急性期の炎症反応は治まり、「びらん」や「潰瘍」となります。「びらん」は表皮や粘膜など上皮に限った損傷で、それがさらに深くなると「潰瘍」と呼称されます。これらはほとんどの場合慢性創で使われる表現です。


b) 原因による「#きず」の分類

① 機械的損傷

切創:いわゆる「切りきず」です。

割層:切らないで割れた傷です。

挫創:皮膚表面の挫滅と皮下組織を損傷する「きず」です。たとえば、脳挫傷では、頭を強く打って、皮膚や骨は傷ついていないが脳が損傷するといったイメージです。

裂創:挫創と同様に皮下組織まで損傷しますが、皮膚の挫滅は伴わないものを示します。実際は挫創と裂創は連続的に生じるので、一緒にして裂挫創と表現されることが多いのです。刺創:刺し傷です。

擦過創:擦りきずです。

咬創:犬や猫または人による「噛みきず」をいいます。

圧挫創:重いものに押しつぶされてできたきずです。

剥脱創:皮膚が脂肪組織の下で剥がれたきずです。

轢創:車や列車に手や足をひかれるキズをこういいます、

デグロービング損傷:手や足ではまるでグローブをはずしたようになるきずです。

その他爆発による「きず」を爆創、銃で撃たれた「きず」を銃創といいます。

 一方、これらの急性創は、なかなか治らないと、びらん・潰瘍となります。機械的損傷で時間が経過したものとして、褥瘡があります。これは長時間の圧迫によるいわゆる挫傷から始まるのですが、これがびらん・潰瘍化したものの総称です。


➁ 非機械的損傷

 化学損傷:例えば塩酸が皮膚にかかったら、皮膚が損傷しますが、それを化学損傷といいます。

熱傷:またいわゆる「やけど」は熱傷、

凍傷:逆に冷たすぎて「きず」ができたら凍傷です。

電撃傷:感電したときにできる「きず」は電撃損傷です。

ここまでは新鮮創をさすことが多いですが、これから述べるものは、時間経過が長い場合が多いので、急性創というより慢性創であるものです。

放射線損傷:非機械的損傷のうちで、慢性創に分類した方がよいものは、医療現場で治療に用いられる放射線による障害=「きず」があります。最初は放射線皮膚炎から始まって、それが悪化すると「びらん」や「潰瘍」となります。

また「きず」に細菌や真菌などの病原体がついて感染が生じ、「きず」が悪化することがあります。このとき、膿瘍や#蜂窩織炎が生じます。膿瘍は膿が貯まるような「きず」であり、蜂窩織炎とは皮下の脂肪組織を含む結合組織の炎症です。

さらに、全身の病気と関係しますが、癌や肉腫といった悪性腫瘍からも「きず」はできます。アレルギーや膠原病によっても皮膚炎が、やがて生じて「きず」となります。血管炎などでもできます。また全身疾患である糖尿病は難治性の潰瘍が生じるだけでなく、「きず」が治りにくく、ゆえに難治性です。



⒊)程度による「きず」の分類

四肢を別にして基本的な体の構造として、皮膚・脂肪組織・筋肉・骨が内臓を保護していますから、この深さによって「きず」の程度を表すことができると思います。しかし、体には浅くても太い血管が走っていたり(脈を触れる場所です)、大切な神経があったりする場所がありますから、それらが損傷すると、もちろん特殊な処置が必要になり、重症となります。また面積が広ければやはり手術が必要となることがあり、浅くても重症である場合があります。


2. 「きず」の治り方

一般的にきずの治り方には一次治癒、二次治癒、三次治癒といった種類があります。


1) 一次治癒

一次治癒とは、簡単に言えば、切りきずがそのままくっついて治るような治り方です。たとえ組織に欠損部ができたとしても、組織を元の位置に戻してしっかり縫合すれば、ぴったりとくっついて治癒し、「一次治癒が期待できる」ことになります。一次治癒が期待できる条件としては、「きず」は新しくできたもので、細菌などが多量についていることがなく、過剰な力が働いて「きず」が開くことのないような状況が必要です。順調に経過すれば、極めて細くて目立たない「きずあと(瘢痕)」となるはずです。


2) 二次治癒

二次治癒とは、大きな組織欠損があったり、縫って治すには感染があって危険な状態で、欠損部が自然にふさがるのを待つような際の治癒形態をいいます。すなわち、欠損部を肉芽組織が埋めて、その上に皮膚ができてくるといったような治癒です。よって基本的には大きな「瘢痕=きずあと」になるはずです。治癒するまでに時間がかかり、さらに「きず」は線維組織による収縮を来して治癒しますので、関節部などでは「ひきつれ(瘢痕拘縮)」を生じるかもしれません。


3) 三次治癒

三次治癒とは、簡単に言えば、二次治癒の途中で一次治癒を目的とした治療をした場合の治り方です。例えば感染した「きず」があるとします。それを毎日洗浄すると「きず」がきれいになります。このまま時間をかけて上皮化するのを待ち、二次治癒としても良いのですが、早くきれいに治す目的で、一部「きず」を新鮮化して縫ってしまう方法があります。こうして治った「きず」が三次治癒した「きず」です。言わば一次治癒と二次治癒の両方が組み合わさった治癒形態です。




3 キズの治し方

1)「きず」の治療方針について

 治療にはバランスが必要であり、積極的治療ができればそれに越したことはありませんが、悪化を最小限に防ぐ治療も時には重要です。例えば糖尿病を有しており、「きず」がなおりにくい方では「きず」を治癒させることを第一に考えねばなりません。シャワーで洗っていても、「きず」が大きくなることもありますし、膿が出続けることもあります。そのようなとき、創傷被覆材を使うより早く治せることがあります。

 

2) キズ治療の禁忌と注意点

最近、インターネットや本などで「ガーゼは百害あって一利なし」とか「#消毒は悪である」といった論調が一部で見受けられるのも事実です。確かに現在は、状況によってガーゼよりも良い製品が使用できますし、以前のように外科領域で行われてきた盲目的な消毒が不要であるとわかってきました。

しかし、だからといってこれらを全否定してはなりません。ガーゼの、変幻自在に形を変えて創部に入れることができる簡便性、その#ドレナージ効果、またポビドンヨードの殺菌効果など状況によってはたいへん有用です。「創傷治癒」に携わる医療者が常に考えなければならないことは、どうすれば「きず」が早くよくなるか、どうすれば「きず」がきれいになるか、ということに加えて、常に全身状態を見て、日々「きず」と「からだ」の状態が変わる患者に対して、種々の選択枝をもっていなければなりません。たくさんある治療の良いところを正しく理解し、悪いところを正しい理由で排除する、幅広い目をもって「きず」の治し方を考えねばならないと考えています。


以下に禁忌と注意点を箇条書きします。


①   縫合における注意点

そのまま縫合してもよいかの検討が必要です。確かに、縫合には止血効果がありますので、頭皮のキズなどは、可及的速やかに縫合(ステープラー留めも含めて)しなければならない場合もあります。しかし、特に顔面などでは、挫滅した辺縁の切除が必要です。

また、#動物咬傷など、感染や汚染の可能性があるキズでは、縫わずに開放にして、後日の縫合を検討しなければなりません。


湿潤療法や#ラップの落とし穴

湿潤療法、例えば「キズパッドTM」を、いきなり貼って何日もそのままにしておくと、時に感染を生じ、傷害部位を超えて、蜂窩織炎のような重篤な感染症になる事があります。ラップ貼布では、同様なことがあります。とくに、ラップは、医療材料ではなく、医療従事者としては、不潔材料なので、キズに直接貼るのは禁忌です。




相談は:水道橋駅前・スクエアクリニック・デンタル医科部門

までお願いします。

Ph:03-6272-8787 E-mail:info@hiko-sq.com


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