1.メスを使わない機器による美容医療とリスク
現在の美容医療の流行は、切らないで良い、種々の機器による美容医療の発達に依存するところが少なくありません。
まず#レーザーですが、照射時間を熱傷が生じないようにコントロールできるQスイッチレーザーの発明から、急速に発展しました。その後種々の波長や出力をもった機器が開発され、シミ取りから始まり、黒ずみ取り、血管腫取り、刺青取り、ニキビ跡やキズアトの瘢痕を平坦にする、脱毛、脂肪を減らす、しわを取る、たるみを取る、 尿失禁を治す、などと対応するレーザー機器が開発されました
また、レーザーの様に一部の波長を切り取ることのない、#IPLなどのフラッシュランプ機器も発展し、クスミ取り、肌理の改善、小じわ取り、脱毛などに効果を発揮し、さらに、ラジオ波機器や超音波機器もたるみ取りに有効とされています。
これら機器による美容医療は、生命予後に影響するほどのリスクはありませんが、出力の過誤による熱傷、誤った診断によるしみの増悪、超音波機器による神経障害、などの後遺症が報告されています。
写真:エステサロンにおける、脱毛レーザーによる熱傷。エステサロンで熱傷を生じさせる程、高出力のレーザーを用いる施術は、医師法違反である。
2.ニセ医者による施術
大別して以下の2通りの事件がありました、
① 美容クリニックの無資格者の機器による施術
レーザーなどの機器による美容医療は、テクニカルには医師でなくとも見様見真似でできるかもしれません。そこで、クリニックの事務職の人が、医師の居ない状況で施術をしてしまう、と言う医師法違反の事件が過去に幾つかありました。白衣を着ていれば医師だと思わせることは容易ですから。気を付けましょう。
② ニセ医者によるフィラー注入
以前にブラジルで、女性が尻を大きくするためにニセ医者に何らかのフィラーを大量に注入されて死亡したという記事がありました。ブラジルでは女性の性的評価はバストより尻の大きさだと聞いたことがあります。死亡の原因はわかりませんが、推測するにフィラーの血管内注入による肺塞栓と思われます。解剖学を勉強した医師であれば、起こり得ないミステークです。
わが国でも、韓国人の看護師を名乗る女性が、水商売の女性をマンションに一室に集めて、顔面や乳房に成分不明のフィラーを注入して歩いている、と患者さんから聞いたことがあります。フィラー注入は注射器と注入する物質があれば、医師でなくとも可能であり、しかも何を注入しているのかもわからないため、ニセ医者が蔓延る分野と考えると、非常に危険なことなので、厚労省、消費者庁やマスコミによる注意喚起が必要です。
➂#脱毛サロンの超音波機器によるたるみ取り
これは最近、わが国で問題となっているので、知っている方もおられるでしょう。ハイフRと言う超音波でたるみを取るという機器です。非観血的な機器なので、医師でなくても使用してよいと言う触れ込みで、業者が売っているのかも知れませんが、神経障害などの後遺症を多く遺し、身体に侵襲を与える機器である限り、医師もしくは医師の指導の下、資格を有する医療従事者でなければ、施術すべきでないと言われています。
3. 海外での施術
日本の美容医療より安価であり、海外旅行のついでに美容医療を受ける、と言う女性が多いようです。対象国の殆どは韓国であり、中国やタイもあるようです。しかし、私はこの様な行為は危険であると思います。
その理由を以下に述べます。
① 医師の素性が不明
美容医療に携わる医師というのは、日本でも外国でも、真っ当な教育機関が皆無に等しく、形成外科などの外科系の卒後研修を十分に経た医師なら良いのですが、そうでない医師も多くいるわけですから、知識や技術にばらつきがあります。とくに、外国では美容医療に携わる医師の経歴や技術を知ることは困難です。
② 安価と言う確証はない
施術の料金が、外国の方が日本より安いというのは思い込みかもしれません。しかし、アフターケアやクレーム対応を謳っているクリニックもありますから、不随するサービスの質に依ると思ってください。
③ 術後の治療がないか、あっても短期
医療と言うのは、レーザー照射とか手術に関わらず、施術後の処置や経過観察が重要です。短期間の滞在中に、診療を施行されて、帰国してから、抜糸を日本の医療機関で行う、などもってのほかです。そのような患者さんを何人か抜糸して経験があります。しかも血腫が遺っていたり、糸が何本か自然に抜けていて、傷が開いていた患者さんもいました。
④ 死亡しても後遺症が遺っても訴訟が困難
これは一番の問題かもしれません。日本の医療機関で診療を受けたなら、あまりに酷い結果が生じれかなれば、訴訟の手順を踏むこともできますが、外国で受けた診療の後遺症や死亡結果を訴えることは容易ではありません。弁護士の問題や言葉の問題で手続きがかなり煩雑になるので、泣き寝入りすることになる可能性があります。
4.にわか美容外科医による施術
ある美容外科チェーンの医師募集要項に、経験不問とあるのをご存知でしょうか。手技の要点はチェーン店内のクリニックで教えるから、臨床研修の済んだ医師なら誰でもどうぞ、というスタンスです。そうして、にわか美容外科医を育ててどこかの院長に据えるのでしょう。
私は大学病院で長いこと形成外科医の育成に携わって来たので、外科医がそんなに簡単に作れるとは思っていません。十分な教育と経験がなければ、患者さんに責任をもって施術できる医師にはなれません。少なくとも医療は患者さんの生命を預かるのです。美容医療も同じです。
5.オンライン診療による薬の処方とリスク
コロナ禍で、医療のオンライン化が促進されて、直接対面しないでも、診察して処方箋が出せるようになりました。その流れで、自費診療が原則の美容クリニックが、薬のネット販売に乗り出しました。顔面への外用剤、化粧品、そしてダイエット効果を謳っての糖尿病治療薬などがあるようです。
しかし、このような流れは極めて危険です。すべての医療用薬剤は適応に医師の責任がついて回るわけで、必要な検査や副作用の説明も対面で行わずに、安易に適応外の薬剤を送付するのは、禁止にすべきです。保険外の自費診療だから、厚労省の非承認薬でも適応外使用薬でも処方してネットで送付する、と言う行為は、ネットで麻薬を販売するような不法行為と何ら変りがないし、にせ薬や抗精神剤を送付してもチェックがなされないと言う恐ろしい行為に繋がりかねません。既に手遅れかとは思いますが、絶対に厚労省は規制するべきです。死人が出る前に!
スクエアクリニック公式HP
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