(筆者著書:「美容医療で死なないために」からの抜粋一部改変)
1. 顔面フィラー注入とリスク
吸収性のフィラーと非吸収性のフィラーがあります。吸収性の代表はヒアルロン酸やコラーゲンです。非吸収性のものには、ヒアルロン酸に何らかの非吸収物を加えたものや、#ポリアクリラマイド、古くはシリコンジェルやワセリン、パラフィンなどの炭化水素系異物があります。
写真:20年前にしわ取り目的でシリコンジェルの注入を顔面にされた女性。
非吸収性のフィラーは、しこりや炎症の原因となり、使用すべきではないと思います。また、吸収性のものでも薄く分散して注入しないと、シコリや炎症の後遺症をのこすリスクがあります。
さらに、フィラー注入の稀なリスクには、血管内または血管周囲注入による鼻翼、口唇や頬の部分壊死や、失明という重大なリスクがあります。これらは、手技の未熟が原因になりますので、形成外科の訓練を十分に受けた医師を選ぶことが、リスクを避ける為に重要です。
また、いかなるフィラーも注射で体内に入れるのですから、#発癌性がないか、#毒性がないかなど成分のチェックは必要です。商品であれば、ラベルの撮影をさせてもらっておくことも一法です。
写真:顔面部分壊死の実例。 韓国で法令線にフィラー注入を受けた際に、顔面動脈に栓塞が生じ、左上口唇、鼻翼、さらに頬部にまで組織壊死を来した。しかし、韓国で施行されたので、訴訟が困難で難儀していると言う。
写真:下眼瞼に若返り目的でフィラーお注入したが、シコリになって、結局皮膚を切って摘出せざるを得なかった症例。
注:ヒアルロン酸注入についてのうん蓄
吸収性フィラーの代表格である、ヒアルロン酸は法令線や陥没部の矯正材として、広く使われています。しかし、以下のようなリスクや問題点があるので、留意が必要です
① 注入の方法は、浅く、薄く、広く、である。一か所に大量に注入すると、異物肉芽腫によるカプセルができて、吸収され難い。しかも、シコリが遺る可能性がある。
② ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸分解酵素)注射による、注入されたヒアルロン酸の分解は有効ではあるが、濫用すると皮膚壊死や色素沈着のリスクがある。
③ 乳房に豊胸目的で大量に注入すると、異物反応が生じ多数のシコリができることがある。
④ 鼻を高くする隆鼻術や鼻筋を通す目的で、注入する場合、眼動脈に誤って注入して失明させるリスクがある。また、法令線に注入する際に、顔面動脈に入ってしまうと、くちびる、鼻、頬の一部に血行障害から壊死を生じる危険性がある。これらの障害は、血管の周囲の注入による炎症による圧迫でも生じ得る。
⑤ 極くまれにヒアルロン酸に対するアレルギー反応がある。
注:ポリアクリラマイドの毒性、発癌性について
単体のモノアクリラマイドは発癌性がありますが、架橋されたポリアクリラマイドはありません。しかし、すべての製品を検査することはできず、混合体であれば危険です。乳房に大量に注入されたことがあるようなので、少し心配です。
2.PRPと成長因子注入のリスク
PRPとは、自己血小板濃縮血漿のことであり、コラーゲン生成を促すとされています。これに、成長因子を加えることで、この作用を強めるとされています。皮膚を若返らせ、小じわを取るとされますが、その効果の程は個人差もあり、確実なものではないようです。そして何よりもその合併症について述べなくてはなりません。
1.の顔面フィラーで述べたような注意点は共通ですが、それ以外に以下の2点について述べます。
① 凸凹になったり、シコリになることがある。
要するに、溶剤を皮下に均等に注入できるとは限りませんから、コラーゲンなどの新生が均等にならず凸凹になったり、シコリができたりするリスクがあります。
② 癌細胞の増殖を促すリスク
成長因子が癌細胞を増殖させることは、医学の常識ですので、これを注入することは、発生途上の皮下癌細胞が万が一あれば、増殖の心配があります。①に述べたシコリが癌でないことを祈るばかりです。
写真;#成長因子加PRP後凸凹を生じた実例。
注:皮膚・皮下にできる主な癌と肉腫。
基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒色腫、毛包癌、汗腺癌、脂腺癌、隆起性皮膚線維肉腫、悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫。
これらの悪性腫瘍の初期の細胞に成長因子が注入されると、増殖のリスクがあります。
もし、成長因子を注入(PRPとの混合も含めて)するならば、以上のことも術前に説明し同意を得る必要があります。
スクエアクリニック公式HP
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