#皮膚にできる癌のうち、転移しない表皮内癌ついて分かりやすく説明してみます。
まず、皮膚の構造と癌細胞の所在が、5年生存率に与える影響を説明します。
図の上の方の波状の区切りが基底膜です。それより上は、血管やリンパ管がないので、転移のリスクがありません。これを、表皮内癌 (上図のClark Levelの1)と言います。表皮内癌はきちんと切除すれば、命の心配はなく完治です。しかし術者が誤診したり、誤って癌細胞の中で切ると、癌細胞が基底膜より下に零れて、転移のリスクが生じます。したがって、最初に表皮内癌と診断して、取り残さないように切除する必要があり、手を付ける最初の医師の責任は極めて大きなものとなります。
図の黒い粒子で表しているのが癌細胞です。この癌細胞が、基底膜を超えて真皮や皮下脂肪層など、下へと波及すると、転移のリスクが生じて、生命予後に関わることになります。この図から、癌細胞が下に行くほど、10年生存率(10 year survival rate)が下がることがわかります。
典型的な#表皮内癌
これは#ボーエン病と言って、#有棘細胞癌の表皮内癌です。初診での、正しい診断と取り残しのない適切な切除で、生命予後はほぼゼロ%に完治します。
周囲を取り残さないように広めに切除しないと、再切除が必要になったり、癌細胞が基底膜の下に零れて、転移の可能性が生じます。
この他にも、#悪性黒色腫(いわゆるメラノーマ)の表皮内癌(Malignant melanoma in situ.)がありますが、診断の難度が高く取り残すと大変なので、経験の豊富な皮膚科医や形成外科医に受診することを勧めます。
耳に出現した、悪性黒色腫(いわゆるメラノーマ)の表皮内癌(Malignant melanoma in situ.)
また、陰部や腋窩部に好発する、#パジェット病は初期には表皮内癌ですが、放置しておくと、癌細胞が基底膜を超えて、パジェット癌になりやすいので、早期発見と完全切除が必須です。
下図は男性の陰部に出現したパジェット病です。
完全に摘出して、皮膚移植を行います。
結論:皮膚の表皮内癌は、早期発見、正確な診断、取り残さない完全な切除、が生命予後を100%保証される必須条件です。それには、十分に経験を積んだ、皮膚科医、形成外科医の診察を仰いでください。
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