目次
まえがき
1.豊胸術のトラブルまとめて
2.顔面フィラー注入のトラブル
注:ヒアルロン酸などの吸収性物質の注入について
3.成長因子のトラブル(PRP=血小板凝縮血漿との混合も含めて)
注:「幹細胞培養液含有化粧品」とか「幹細胞注射」とかに注意!
4.二重術のトラブル
5.目がしら切開のトラブル
6.隆鼻術のトラブル
7.鼻形成のトラブル
8.口唇形成のトラブル
9.口唇裂変形修正のトラブル
10.フェイスリフトのトラブル
11.糸によるリフトのトラブル
12.陥没乳頭形成のトラブル
13.脂肪吸引のトラブル
14.脂肪注入のトラブル
15.ポリアクリラミド(Poly-acrylamide)の注入による後遺症
16.シミ取りレーザーのトラブル
17.脱毛のトラブル
18.植毛のトラブル
19.刺青とりのトラブル
20.金の糸について
21.乳房バッグが破れているから入れ替えが必要という誤診?によるトラブル
22.脂肪注入による豊胸のトラブルと嘘
23.フラクショナルレーザーによるキズアト修正のトラブル
24.脂肪冷却機器による凍傷のトラブル
25.腋臭症手術のトラブル
26.ラジオ波機器によるトラブル
27.包皮切り過ぎや陰茎手術のトラブル
コラム1.コラーゲンやヒアルロン酸を経口摂取するとどうなるか?なぜ美人の湯とか言うのか?
コラム2.キズには何でもラップ貼れと言う無謀
28.広告の安い値段を信用したら、高額な支払いになってしまった
29.異物の摘出に高額請求されて手術を受けたが、実際には少ししか摘出されなかった
30.手術前説明と違う(説明されなかった)ことをされたというトラブル
31.クレームを言いに行ったが施術医が移動・退職して居ないと言うトラブル
32.エラ削り(小顔)のトラブル
コラム3.チェーン店型クリニックと個人営業のクリニックはどう違う?更に大学病院は?
注:大学病院の悪徳形成外科医に注意!
33.ケロイドの再発―ピアスケロイドも含めて
34.目が閉じにくくなった
注:球後血腫の恐怖
35.ホームページに掲載されている美容外科医の経歴は正しいか?
36.ニキビ跡の瘢痕に炭酸ガスレーザーを広範囲に照射されて酷い発赤が治らない
37.美容外科の手術後、精神的に病んでしまった
注:美容医療と精神疾患
コラム4 ニセ美容外科医に注意!
コラム5 美容外科医の犯罪について
コラム6 M to Fの形成美容外科の後遺症について
コラム7 形成外科と美容外科の関係は?なぜ日本には同名の美容
外科学会が2つあるのか?
注:公益社団法人日本美容医療協会とは?
結論!美容手術・美容医療を受ける場合の覚悟について
1.癌早期発見の阻害
2.全身疾患(ヒト・アジュバント病と悪性リンパ腫)
3.切らない方法を選んだが、切る羽目になった
4.感染による潰瘍や皮膚壊死
5.アートメイクやタトゥーのためにMRI撮影不可というトラブル
6.豊胸後にマンモグラフィーが受けられない
7. 空港での全身スキャナーで入れたものが描出される
8.麻酔の事故
注:局所麻酔の痛みとリスク
9.肺塞栓(=エコノミークラス症候群)
10.蜂窩織炎から敗血症、そして死に至る
11.外国で受けた美容手術のため、訴えることができない
コラム8 ネットの情報にご用心
コラム9 美容外科の霊感商法的手術誘導に注意!
あとがき
まえがき
筆者は、1995年から2015年まで、日本医科大学形成外科学講座の主任教授(のちに大学院教授)をつとめ、その間に付属病院に美容外科を開設して「美容外科後遺症外来」を併設しました。任期中、多くの豊胸術後遺症の診療に当たり、合わせて美容外科手術のみならずレーザーを含む美容医療のトラブル患者の診療を施行してきました。
2015年に定年退職し、水道橋駅前に「スクエアクリニック」を開設し引き続き美容外科・美容医療の後遺症患者の診療や裁判例の鑑定書・意見書の作成に協力してきました。
本書では、筆者がこれまでに経験した美容外科・美容医療のトラブルや後遺症について詳述し、安易な受診や治療に警告を発するものであります。なお、内容の性格上、患者名・医療機関・機器・フィラーの商品名の記載は行いませんのでご了承下さい。治す方法にはできるだけ触れますが、手直し不可能な後遺症も多いため正直に記述します。
1.豊胸術のトラブルまとめて
そもそも日本医大形成外科は、私の先代の「文入正敏教授」の時代から豊胸術の術後障害の診療は日本随一でした。
パラフィン、ワセリン、シリコンジェル注入の時代:戦後の日本では、異物の注入による豊胸術が半ば闇で行われ、異物もパラフィン・ワセリンなどの炭化水素からシリコンジェルに至り、シコリの形成や変形、異物の皮膚への染み出し、自己免疫疾患であるヒト・アジュバント病の罹患などの惨害を遺しました。
シリコンバッグの時代:1980年頃からは、シリコンジェルをシリコンラバーなどのバッグに封入したバッグプロテーゼが市販され、腋窩部や乳房下部から挿入されました。しかし、カプセル形成によるシコリや破裂、劣化によりシリコンジェルの注入と同様な後遺症が発生することもありました。
生食バッグの時代:1990年代は、生理食塩水バッグ(生食バッグ)が世界を席巻しました。しかし、感触が悪い、外力や気圧の急変で破潰しやすいなどの欠点から、長くは続きませんでした。
コヒーシブ・シリコンバッグの時代:2000年頃からの主流は、バッグが破れても内容物が流出し難い「コヒーシブ・シリコンバッグ」が用いられるようになりました。
その他:しかし、一部でハイドロジェルの注入やハイドロジェルバッグの埋入、正しくない方法での脂肪注入(項目21を参照)なども行われ、感染による皮膚壊死や乳癌との区別の難しいシコリの形成という後遺症を生み出しています。
悪性リンパ腫の発生:更に最近では、欧米でテクスチャータイプのバッグ(バッグの表面がザラザラしている)による悪性リンパ腫の発生も稀にあるとの報告があり、我が国でも発生しています。
乳癌の合併について:シリコンに発癌性がないことは実験的にも臨床的にも証明されていますが、ハイドロジェルとくにポリアクリラミドが単体になると発癌性が懸念されています。シリコンにせよ、脂肪注入にせよ、シコリを作る可能性があるので乳癌の自己診断や早期発見を阻害することは明白です。
シリコンジェル注入後の乳ガン合併例。右はそのマンモグラフィー。
異物肉芽腫とガンは陰影の濃度で判別できる。しかし、より早期の発見は困難と思われる。
(左)シリコンジェル注入後の左右のマンモグラフィー。白く写っているのがシリコンジェル(右)。
シリコンジェル注入の後遺症―乳房の変形とシリコンの皮膚への染み出し。
炭化水素系異物とシリコンジェルの二重注入による乳房の変形。
数十年経過したシリコンバッグの被膜の劣化により、内容のシリコンジェルが漏出。
腋窩部のバッグ挿入口のキズアトが目立つ例。
参考書籍:百束比古著 バストを大きくする前に読んでおく本(アマゾン出版)
(つづく)
スクエアクリニック公式HP
警鐘!美容医療の落とし穴: 〜美容外科・美容医療に 纏わるトラブルや後遺症集
美容医療で死なないために: 美容外科・美容医療に纏わるネガティブな問題と近未来への提言
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