豊胸術後に起こりうる障害についてシリコンやパラフィン・ワセリンなどの注入後1950年代から1980年代までに行われていました。多くは硬いシコリの形成やシリコンの皮膚への染み出しによる皮膚の異常です。
シリコンバッグ挿入
1980年代から現在まで行われています。2000年代からは、コヒーシブシリコンバッグといって体内で破裂しても、中身がこぼれないバッグが使われていますが、20世紀の古いバッグは中身のシリコンが染み出したり、破裂するとシリコンが流れ出して体内のあちこちに移動する事もあります。多くの後遺症はシコリの形成です。
生理食塩水バッグ挿入
1990年代に世界で行われました。しかし気圧の急激な変化などで、破裂する危険性が指摘され現在では使われていません。
ハイドロジェルの注入とバッグ挿入
ポリアクリラミドという物質で、1990年代にウクライナから中国へ伝播しました。その後、我が国でも使われるようになりました。放射線透過性があるので、乳がんが合併した場合、早期発見ができるというのが売り物で、初期には物質本体の注入、やがてバッグに封入されたものが使われました。しかし、この物質は単体では発がん性があり、成分の保証が得られないので、現在では廃れています。
脂肪注入
自分の脂肪を腹部や大腿から採取して、胸に注入するという方法は、1990年代以前から一部で行われていました。しかし、注入された脂肪は死んだ組織であるため、その生着率は低く、シコリ形成や感染の併発がしばしば見られたので、学会では認められていませんでした。しかし、21世紀になって米国の形成外科医が小さな塊で少量ずつ注入すれば、生着率が高くなるので患者さんの事前の承諾があれば、行っても良い方法だという論文を発表しました。しかし、日本の美容外科医の一部は、これを逆手にとって、そのような時間のかかる方法ではなくても、脂肪注入が学術的に認められたとの、拡大解釈で従来からの脂肪注入の方法を継続しているようです。その結果シコリ形成、感染、早期乳がんの発見が邪魔されて乳がんが進行してしまう、という悲劇も起こっています。
ヒアルロン酸製剤
2000年代から一部で「サブQ」などと称して、ヒアルロン酸注入による豊胸術が行われましたが、結果としてシコリの形成などの後遺症を生み現在ではあまり行われていません。
顔面へのフィラー注入
しわや凹みとりの目的で法令線、目の下のゴルゴライン、下唇から顎にかけてのマリオネットラインといった加齢に伴い凹みが目立ってくる箇所に、フィラーを注射することがあります。ここで、フィラーの知識をまずわかりやすく述べます。
吸収性のフィラー
これにはコラーゲン、ヒアルロン酸があります。いずれも皮下に注射することで凹みを矯正します。半年から1年で吸収されるので、また注射する必要があります。
非吸収性フィラー
吸収しないで残る目的で、様々の非吸収性フィラーが商品化されています。しかし、それらの注射によって、塊状や線状のシコリが形成されることがしばしば生じます。摘出には皮膚切開が必要となり、結局キズアトが遺ってしまい、本末転倒になります。
隆鼻目的のフィラー注入
鼻を高くする手術を「隆鼻術」と言います。方法は大まかに分けて3つになります。
一番目は自分の耳の軟骨を採取して鼻に入れる方法です。自分の組織ですから、異物反応は起きませんが、場合によっては、両方の耳から軟骨を取る必要があり、耳はほとんど変形しませんが、耳の後ろにキズアトが遺り、稀にケロイドになることがあります。
二番目は固形のシリコンなどを削って鼻に入れる方法です。一番目も二番目も鼻の穴の皮膚切開から入れます。但し飽くまでも異物ですので、化膿したり穴が空いたりすることも稀にあります。
三番目は、吸収性もしくは非吸収性のフィラーを、注射で入れる方法です。しかし、いずれにせよ、思ったほどの隆鼻効果を得ることが難しく、また非吸収性の場合、一度入れたら直しようがなく、異常なシコリになったり、異物反応で赤く腫れたり穴が空いたりすることも皆無ではありません。また、稀に目に行く血管に注入されて失明することがありますので、医師を選んでください。
※注入隆鼻の不適切な結果の写真
PRP(濃縮血小板注入療法)と成長因子注入
皮膚のコラーゲンを新生させ、若返りを図るという名目で、これらの皮下への注入がおこなわれているようですが、顔面に多数のシコリを形成して悩まれて来られる方を、多数診察します。なお、成長因子は皮膚がんや毛穴の癌あるいは真皮部の悪性腫瘍があると、がん細胞や悪性細胞の増殖を促すことがありますのでご注意ください。また、シコリが形成されると癌との区別がつきにくいことも不安の原因になります。下の写真は成長因子付加
※PRP注入後にシコリが形成された写真(おでこ)